「何焼きですか」問題
同業者の作家さんとの会話で「何焼きですか」問題が話題に上ることがよくあります。
その際、「井口君はいいよね、備前焼だと答えればいいから。」と言われます。ですが、私のお客さまの中にも、焼締陶を見てから釉薬ものの作品を見て、「じゃあこれは何焼きですか?」と尋ねられることもあります。「そうですね、井口焼ですかね。」と軽口をたたくと変な空気になることがあります。(笑)
静岡にも陶芸を生業としている集落はあり、明治期から始まった森山焼(森町)、400年ほど前から始まった志戸呂焼(金谷)など、4, 5軒の個人作家が集まっています。しかし、私が10年以上修行した備前や、焼き物の学校に通うために住んだ瀬戸、京都などと比べるとかなり小規模な窯業地です。そのような地域で陶芸を続ける限り、「何焼きですか」問題は宿命なのでしょうか。
最近お会いしたデザイナーさんが、静岡で仕事をしていると先方に気付かれた時点で、東京のデザイナーさんに仕事を持っていかれてしまうことが多いとおっしゃっていました。それが地元静岡の企業にも関わらずです。静岡の陶芸家である私も、大規模な窯業地の作家や窯元に仕事を持っていかれているということもあると思います。そこにも「何焼きですか」問題が潜んでいるかもしれません。
「シャネルですか?ヴィトンですか?」とブランドを聞く感覚なのだ、とポジティブに捉え、これからも「何焼きですか」問題に付き合っていこうと思います。